ITU-TのCxO会議にJIIAの代表理事が参加・講演

国連専門機関である国際電気通信連合(ITU) の国際電気通信連合電気通信標準化部門(ITU-T)が主催し、各国のトップクラスの通信関連企業のCEOクラスの幹部によって通信に関わる最新の技術動向を発表するCxO Roundtable(2023年12月5日開催)に、JIIAの代表理事 渡邉雅仁が招待され、マシンビジョン・テクノロジーの中期展望を発表しました。
今回の参加は20か国40名程度、日本から参加したNTTがIWONを発表しています。
今回の発表の中で、現在JIIAが参画しているマシンビジョン国際標準化アライアンスであるG3が中心となり、マシンビジョン・テクノロジーの現状の課題を解決、得られる成果を提案しました。具体的には、OPC Machine VisionとGenICamを融合、ITU-Tで標準化が進められている6Gなど低遅延・大容量・高品質の超高速ネットワークを利用したマシンビジョン技術により、設計最適化・品質検査・設備メンテナンスをバーチャルやリモートでストレスなく実施でき、エコ化に貢献できることを提案しました。

マシンビジョンと次世代ネットワーク

【講演資料】マシンビジョン技術の中期展望
Medium term prospects for Machine Vision technology



マシンビジョンは機械の目
日本の月面精着陸実証機SLIMが月面への精密着陸を実行しエンジン異常にも関わらず軟着陸、その際に放出したLEV2(SORA-Q)が撮影した画像によりその成功が証明されました。
SLAMはその後傾いた姿勢のまま予定された観測を続けることができているようです。
素晴らしい成果であり関係者は大いに誇るべき結果と思いますがこのミッションではマシンビジョン技術が重要なポイントになっていることをご存じでしょうか。


マシンビジョンは機械の目というその名の通り、人の目で行ってきたあらゆる判断を機械に置き換えることにより、人の目の能力を補完し超えることで発展してきました。
SORA-QのSLIMをとらえた画像は素晴らしいものです。ですが画像だけではその意義の十分の一も素晴らしさが伝わっていません。
開発担当によると、「放出後カメラとしっぽを出す変形展開。周囲を移動しながら撮影を行い、同時に画像を最適化。撮影画像の中からSLIMが移っているものと思われる画像をSORA-Qが選択しLEV1に圧縮画像の転送。ここまで自立制御している」「元画像はもっと高解像度で美しいはず、その画像を見てもらえないのが悔しい」
古来、人の目でとらえた情報をたとえば狼煙のような方法で遠方に伝えることにより情報の利用価値を最大にしてきた人類の歩みを想起する内容です。
短い運用時間と限られたバッテリー容量の中で最大限の仕事を実現した事実ともっと何かできたはずだと考えるエンジニア魂を感じます。
内蔵されたSONY製のセンサーとプロセッサの能力を踏まえた正直なそしてすこし”くすぐられる”コメントと思います。

ビデオ監視にとどまっていた宇宙の現場で“SLIMが撮影されたと思われる画像をSORA-Qが選択” するようなことが当たり前になってきたようにマシンビジョン技術が様々な場面で人の目や判断を補強することが実用化されつつあります。


  • 自動車の自動運転


  • 旅客機の着陸補助システムの画像(イメージ)


  • トマトの自動収穫および出荷データベース生成

  • 生育情報などのネットワーク化により収量の増加や最適出荷時期を見据えた育成管理が可能となる。

     

    マシンビジョンと次世代ネットワークがもたらすもの

    現在マシンビジョン技術の情報の多くはオンサイトにとどまりその場で消費されてしまうことがほとんどでした。個々の車両、機体、機器の制御などにのみ使われてきた画像データをなどを統一した規格により相互アクセスしアプリケーションの可能性を広げることは、社会に役立つソリューションを豊かに発展させる基盤となるものです。
    たとえば今後の空港では、空港内を走行する車両、航空機の画像がAIにより統合管制された中で個々の車両、航空機が自動走行ことになるでしょう。離着陸する航空機の安全も飛躍的に向上することになります。
    製造現場では発生した問題の原因特定をネットワーク学習をリモートで行い問題を解決することがより普通に行えることになるでしょう。
    このようなことはこれまでも可能でしたが膨大な通信量を必要とするため反応が遅くなるなど実用的ではありませんでした。

    マシンビジョン規格と次世代ネットワークの融合

    NTTが提唱するIOWNをはじめとした次世代通信ネットワーク(Beyond5G/6G/IMT2030)は現在の100倍以上の通信速度を実現しますが、その膨大な情報量ゆえに従来の技術のみでは膨大なエネルギーを必要としてしまい発展が頭打ちになってしまいます。さらなる高速化には低消費電力を実現化する光半導体の実用化や、通信規格と密接に連携した制御、データ規格化による利用エネルギー効率を向上が欠かせません。
    JIIA は2023年12月5日にドバイで行われたITU-TのCxORoundTableに参加しました。COP28の関連会議でもある本会議では、増大する膨大な通信量を実現するため、エネルギー効率に優れた上記次世代ネットワーク規格の推進とOPC-UAやGenICamなどのマシンビジョン規格の通信規格への統合による相互利用性と効率を向上ことなどがコミュニケとして採択されました。これを受けて国も関連事業に460億円を超える補助を行うことを進めるなど注目を集めています。
    JIIAはマシンビジョン規格を提供する世界中の団体と協力し2024年4月15日ジュネーブ国連本部で行われるITU-T本会合参加に合わせてマシンビジョンワークショップ開催準備にあたるなど積極的に活動を行っており、将来のマシンビジョン産業の発展と豊かな社会の実現に寄与していきます。

     

    CxO

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    2017年~2019年までの統計データ(第10版)を発行

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